シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
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僕は揚々として、恋人繋ぎで芹霞と歩く。

芹霞はまだ慣れないらしく、周囲の熱にアタり続け、まるでしゃっくりのように"ひっ"の連続だ。


「玲くん…ねえ場所を…」

「駄目」


先刻からの変わらぬ芹霞の要求を、即座に却下し続ける僕。

終には逃げ出す姿勢を見せ始める芹霞を、僕は繋いだ手を離さず、逆に強く引き寄せる。


「玲くん…余りに凄すぎて、

あたし…変になりそう…」


凄い台詞だね。

自覚ない天然は困るね。

涙に潤んだ目を向けられると、何だか勘違いしそうになる。

ぷるぷると震える様を見ると、僕の腕の中に閉じ込めてしまいたくなる。


「僕がいるのに…楽しめないの?」


少し…寂しくなって聞けば、芹霞はぶんぶんと頭を横に振った。


「場所なんて、どうでもいいでしょう?」


そう言いながら、此処から動こうとしない僕もどうかとも思うけれど。


「ね?」


するすると、もっちりとした頬をなで上げる。


指に触れる芹霞が…心地よくて、僅かに目を細めてしまう。


「ん?」


じぃっと見つめてくる芹霞に、首を傾げて尋ねれば、芹霞の顔は真っ赤になった。


嬉しいね。


今この甘い空気は、僕と芹霞だけのもの。

本当の恋人同士みたいだ。


僕の気分は益々高揚した。


視線。

視線。


ああ、こっちを見るなよ。

今気分がいいんだから、放っておいてくれよ。


ちらちら、ちらちら…芹霞に向けられる男達の視線。

隣に恋人を立たせて、僕の芹霞に色目を使う。


僕に嫉妬の眼差しを送ってくる。


「……気に食わないね」


周囲に殺気を飛ばしながら、見せ付けるように芹霞を抱き締めると、


「お手柔らかに~」


芹霞が目を回してくたってしまった。


僕、過去こんなに殺気を飛ばしてデートをしたことがないよ。

こんなに見せ付けたこともないし。


のびた芹霞を腕に抱いて支え、その頬に僕の頬を擦り付けた。


ああ、何だか止まらないや。

完全に僕も、周囲のピンクに汚染されている。