シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
うん。

此処はいい。


此処は芹霞にとって、刺激的でいい。


僕を嫌でも"男"として意識してくれるだろう。


僕は上機嫌だった。


「周りが気になるの?」


身を屈めて、芹霞の耳元で囁けば、真っ赤になった芹霞が静かに頷いた。


この初々しさがたまらない。


「僕達だって…結構凄いの、してきたじゃないか」


つい…意地悪したくなってくる。


「!!!?」


ムンクの叫び。


「気にならない方法…教えてあげようか?」


「?」


「僕達も、2人だけの世界に入ってしまえばいいんだよ。そうすれば、周りの事なんて気にならなくなるから」


「れ…れれれ!!!?」


「レレレのおじさんが何? …んっ」


ちゅっと唇にキスを落として、固まった芹霞に笑いながら…僕は芹霞の下唇と、続けて上唇を舌でぺろりと舐めた。


「れれれ…」


またレレレだ。


何だか、凄く気分がいいや。


「れれれ…」


芹霞はレレレの世界から帰って来れないらしい。


「これが…"カレカノ"の実体だよ? ほら…幸せそうでしょ?」


僕の悪戯心に火が付いてしまった。


抱き合って身体をいやらしく密着させ、濃厚な口づけをかわすカップルを指差して見せたら、案の定…芹霞は目と口を大きくあけたまま石になった。


「ね、何もおかしなこと…僕してないでしょう? むしろ可愛いものでしょう?」


「あ、甘くみていた…S.S.A。凄いものなんだ、"カレカノ"…」


ごめんね、芹霞。

刺激が強すぎたね。


鼻血…垂れちゃった。


「これは、特別ノーカウントにしてあげる」


僕は笑いながら、ティッシュを芹霞の鼻に被せて、


「見られたら恥ずかしいだろう?」


きゅっと正面から抱きしめた。


「僕が隠してあげる」


往来でこんなことをするなんてね。

何してるんだろうね、僕。

注目されているのが判る。

羨ましがられているのが判る。


それに満足感を感じるなんて、僕はおかしいのだろうか。


周りに煽られ、羞恥よりも愛しさが募る僕は…これから来る嵐を予感することは出来なかったんだ。


心が…浮揚しすぎて。