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確かに…あのチケットは役に立った。


『本日は300名様限定のイベントによる貸切にて、当日券は販売しておりません』


数を限定しているのなら、紫堂財閥の力が効果あるか判らない。

ごり押しすればいいかもしれないけれど…。


「玲くん、何のイベントだろうね!!?」


僕より前を駆けた、芹霞は目をきらきらさせて大はしゃぎ。

由香ちゃんから聞いていてよかった。


芹霞は本当にS.S.Aに来たかったみたいだ。


しかし…噂に聞く、カップルだらけの園。


あちこちべったり寄り添い、キスを交わし…濃度の高いピンク色に包まれた空間。

自分達の愛の深さを人に見せつけて、満足している。


それ以前に、相手に溺れすぎて、他人のことなんか目に入っていないのかも知れない。


見ている分には決して心地いいものではないけれど…だけど堂々と、相手を恋人として誇示できるのは羨ましくも思う。


僕達だって…此処に入れた"恋人"には違いないのなら、少しは…こうした恋人気分を満喫してもいいのかな。


見せつけてもいいのかな。

此処なら…許されるかな。


ちらり…と隣(パートナー)の芹霞を盗み見た。


案の定、面白すぎる反応。


「…ひっ!!」


悲鳴を上げることもないと思うけれど、芹霞には衝撃的すぎたようで…ぎこちなく周囲を見渡しては、時々目を大きく見開いて、カップルのいちゃいちゃぶりに仰天し、都度仰け反っていた。


可愛いね、これくらいで。


僕は芹霞の指に、僕の指を絡めた。


「…ひっ!!」


僕はタイミングを図っていたのだけれど…芹霞にとっては突然過ぎたようだ。


「…酷いなあ、芹霞。僕…傷つくよ?」


そういいながら、指の腹で芹霞の指と指の間をまさぐる。


「ご、ごめん…。あ、あのね…玲くん…違う場所行かない? S.S.Aじゃなくて…」

「駄目」


僕は笑いを堪えて却下した。


芹霞の目が戸惑いに揺れる。


「あ、あのね…他に行きたい処が…」

「駄目」


また却下する。