"約束の地(カナン)"での"お試し"を始める際も、芹霞は中々頷かなかった。


嘘でいいと言っているにも関わらず。


あの時の、泣きたい心地を思い出して益々心が苦しくなった僕。


アイシテ。


結局、2日間でもって芹霞を意識させられても、本物の恋心に変えられなかった僕は、最後の1日でもって何とかしないといけなくて。


それが始まってすぐという時間、ここまで拒否られるとは思っていなくて。


アイシテ。


だけどまだ始まったばかりだから。

まだ今日は終わっていないから。



ボクダケヲアイシテ。



芹霞の可愛い唇から、決定的な絶望の言葉が紡がれるのを極度に恐れた僕は、この空気を何とかして変えたくて…自分の浅はかな行動を悔いていた。


予定では…今日の最後に、告白するつもりだった。

こんなに早く想いを告げて、変な緊張感を芹霞に与えるつもりではなかった。


自然の流れで、"意識"という形における緊張感を引き出すつもりで。


ところが、僕は自分の想いに駆られすぎて…失態をおかした。


芹霞を警戒させてしまっている。


"お試し"として僕を"彼氏"として試して貰うよりもまず、"彼氏にはなりえない"僕を決定づけさせたように思えて仕方が無かったんだ。


時が巻き戻せたら。


激しい後悔ばかりが胸を占めた。


こんな予定じゃなかったんだ。


"彼女"にこんな顔をさせていること自体、これじゃあ…仮初の"恋人"以下じゃないか。


だけど救いは芹霞の優しさだった。


芹霞もまた、僕を愉しませようとしていたようだった。


だから"お試し"まで引き上げてくれたんだ。


だけど僕は、あくまで真剣で。


同情ではなく、本気で僕を考えて貰いたくて。


しつこい程、何度も何度も聞いた。


――うんうん。