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私が体力回復の為に水槽(ポッド)に眠り、既に5日が経過していることは緋狭様より聞いている。


久しぶりに出た外界。


昼間の新宿なのに、やけに静かだと思った。


『安愚楽』に向っていた時は、屋根伝いを飛んでいて気付かなかったけれど、今…徒歩にて、近い距離にあるだろう"北新宿に"向っていた私は、"違和感"を強めた。


静か過ぎる違和感。

活気が消えた新宿。


特に、あらゆる欲の集約先である新宿界隈は、いつものぎらついた賑やかさはまるでなく…ひっそりとした物寂しさを感じるのだ。


ごみごみとした廃棄物が見当たらぬ、まるで風致地区のような整然とした景観。


それはまるで官庁街である、永田町を歩いているような静謐な空気で。


通行人の身形(みなり)は、皆しっかりしすぎていて…やや堅苦しい。


そうした"綺麗さ"は、新宿という街においては艶消しの要素に思えた。


街を生気付かせる、"若者"が極端に少ないのだ。


だから活気がないのか?


それだけではあるまい。


まるで――

張り詰めた空気が破裂する寸前のような…


何か外部的力の影響を感じるのは、考えすぎなのだろうか。


空気が緊張している。


その緊張をもたらすものなら私は知っている。


瘴気。


瘴気が拡がると、空気は一時緊張状態になり…次第に穢れていく。


だとすれば、何らかの瘴気が…新宿を覆っているというのか?


しかし確固たる"これ"といったものは見当たらなかった。


もし此処に櫂様か玲様がいらしたら、瘴気の正体を掴めただろうけれど、私には"感覚"だけしか掴めない。


ただ――

妙な視線は感じる。


1つ2つのものではなく、至る処から監視のような眼差しが感じられるのだ。


その姿は…見当たらない。


だが、その妙な目線には…瘴気が含まれているように感じられた。