「ははは、紫堂玲なら涙してることだろう」
「俺が――玲を嫌えるわけがないだろう?
何をどう考えても…玲は嫌えない。
だが玲のことだ。そうは思ってくれない。
今頃罪悪感で頭がいっぱいのはずだ。
玲は…芹霞を守り続けてくれた。
俺はあいつを置いて逝ったのに、
玲はその間も芹霞を守り続けた。
あんな…紫堂の中で。
そうした玲を、芹霞は選んだ。
俺は――
負けを認めねばならない」
「いいのか、せりを譲って?」
俺は否定するように笑った。
「ちゃんと…釘は刺したぞ?」
『I go to take it』
(奪いに行く)
「俺は貪欲な『気高き獅子』。
欲しいモノは全て手に入れてやる」
そう。
例え12年の思い出が破滅しても――
俺の想いは生きている。
生きている限り――
何度でも奪いに行こう。
何度でも惚れさせよう。
「随分な自信だな」
「ああ。やってやる。
逆転は可能だろう?
俺が…
生きている限り――」
俺は笑った。

