「紫堂櫂。久涅のことなんだが…
久涅は――」
唐突に聞こえたその名前。
俺はすっと目を細めた。
「ああ、お前も気づいていたか」
「ああ。反応があった。
だが久涅の立ち位置が判らない。
だから気をつけろよ」
「判ってる。
久涅は恐らく――」
破けた背中に見えたモノ。
俺は…緋狭さんを見つめた。
久涅は、屋敷にて俺が聞いていたことを判っている。
判っていて…そんなものを無防備に俺に見せたのは…
「あいつもまた、"必然"に動く連中の1人」
久遠の言葉に…俺は頷いた。
「最後に…1つ聞きたい、紫堂櫂」
久遠が言った。
「玲…のことか?」
久遠は頷いた。
「あの手紙に…書いたのは何だ?」
「ああ、あの請求書の下には――」
『I'll be back』
(俺は戻ってくる)
そして――
『I help you,Believe.』
(お前を救ってやる。信じろ)

