そして情報屋が消え――
外界の者は俺だけとなった。
「世話になった」
俺は頭を下げた。
「よせ、気持ち悪い」
久遠は顔を背ける。
「久遠。この借りは必ず返す。
必ず――
5日後に戻ってくる。
全てを逆転し…
こんな穴蔵から出してやる。
だからそれまで――」
久遠はひらひらと手を振って。
「緋狭を守ってやるよ。
『貧弱な子猫』には出来ない業だからな」
本当に口が悪くて、カチンとくるけれど。
俺は忘れない。
久遠はあの時――
酔っていなかった。
酒気がなかった。
入っていたのは…蓮に入れさせたただの水だろう。
酔ったフリをして、隠し続けたい心を犠牲にして…
俺を助けようとした…その心を尊重したいから。
だから、俺は…
手首の布を外す決心をしたんだ。
久遠に…託そうと思ったんだ。

