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あたし達だけを乗せたヘリが、"約束の地(カナン)"を離陸する為に轟音を奏でた。



あたし――

本当に帰っていいの?


何度も自問自答を繰り返す。



久遠…。


煌…。


そして皆――。



危険は去ったというわけではないのに。


あたしだけが安全な場所に帰るなんて。


ねえ久遠…。


どうしてあたしを"約束の地(カナン)"から追い出そうとしたの?

どうしてあんなに…らしくない表情を見せたの?


どうして…キスをしたの?


どんなに大丈夫だと信じたくても、時間が経つにつれ、皆から離れるにつれ、次から次へと溢れる不安は拭い切れず、手がカタカタ震えてしまう。


玲くんが黙ったまま、あたしの右手を握った。

玲くんの手は無性に冷たくて、やはり震えていた。


左側に居る桜ちゃんは…

ずっと窓の外ばかり見ている。


おかしな不安を抱えているのは、あたしだけじゃない。


それでも帰還しないといけないこの不条理さ。


ヘリの機体が、持ち上がる。


空気の質が、上空故の窒息感を湛えたものに変わる。


「………っ」


もう――

東京に戻るしかない。