だけど。
儚げだけれど、潔い…
そこに久遠の何らかの意思を感じたあたしは、抵抗することに意味がないことを悟る。
あたしは、久遠の意思を変えることは出来ない。
だったら、信じるしかないじゃないか。
危惧することは何もないと。
「紫堂玲…せりを守れよ」
「……約束する」
玲くんに向けられた紅紫色の瞳は、またあたしに向いた。
「せり…笑っていろよ?」
大丈夫。
きっと大丈夫。
あたしが信じなくてどうするんだ!!
「……久遠。
あたし――
5日後に、また"約束の地(カナン)"に来るからね!!?
皆のこと、お願いね!!?
皆に、先に帰ってごめんって言ってね!!?」
「ヘリを出すぞ!!!」
苛立ったように怒鳴る久涅の声は、ヘリ付近から聞こえてきた。
タイム…リミットか。
「行きましょう…芹霞さん」
桜ちゃんの声。
「行こう、芹霞」
玲くんの声。
あたしは…
何度も何度も振り返り、久遠に手を振った。
どうか…
どうか…
皆無事で。
元気でまた会おうね。
そう…切に願いながら。

