「"約束の地(カナン)"にこんな胡散臭いものを置いて行くな。燃やすのも忌々しい。それから。ちゃんと忘れず請求書も入れておいたから」
「………」
玲くんは何も答えなかった。
「紫堂玲。
真実せりが好きならば――
どうか…
オレの心も汲み取って欲しい」
久遠の…心?
「――…は、晒したくない」
よく聞こえなかったその言葉に、玲くんの目が見開いて。
「これしか――
方法がないんだ」
久遠の言葉に、玲くんは狼狽しているように見えた。
「玲、ヘリに乗るのか、置いて行くのか」
久涅の苛立った声に、玲くんは…。
「僕は――…」
そして、苦悶に歪ませた端麗な顔を横に背けると、続く言葉を切る。
そんな玲くんに、久遠は妙に穏やかな声をかけた。
「言っただろう、オレは。
せりの心のままに、と。
それに対して、誰にも異は唱えさせない」
玲くんは更に沈痛な面持ちとなり、黙り込んでしまった。

