シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「何その…邪魔者扱い!!!

会ったばっかりで、帰れって何!!!?」



多分――あたしの見間違い。


ありえない。


久遠が泣きそうな顔をして…



"愛してる、せり"



そう唇を動かしたなんて。



きっとあたしの脳内は薔薇色で、

おかしなおかしな幻想が生まれているんだ。



「……戻る」



突如、そう背を向けて、反対側に歩き出したのは紫堂の当主。



「せりと紫堂玲を連れていけ」


「……勝手にしろ」



「ということだ、せり」


そして久遠は、あたしを乱暴に突き飛ばした。



「やだよ、ねえ…玲くん。まだ居よう?

何だか…帰りたくないよ。


それに…煌もまだ…」


そんなあたしの言葉を遮るように、久遠の声が淡々と響く。


「ヘリには、当主と久涅以外に…何人乗れる?」


ずっと黙っていた久涅が、重い口を開く。



「特別仕様だから…あと1人」



「ひ、1人!!!?」


ありえないよ、だって此処には…。



「煌以外にも、由香ちゃんも小猿くんもクマも居るのに…」



あれ、そう言えば――

由香ちゃんも小猿くんもクマ男も居ない…。



「せり。葉山を連れろ」

「は!!!?」


命令口調で久遠は言う。


「いいな、葉山。

お前は――

紫堂の警護団長なんだ」


強張った顔つきをした桜ちゃんは…こくんと頷いた。



「僕…まだ此処に「紫堂玲」


瑠璃色の瞳が鳶色の瞳に絡みつく。



「忘れ物」



そう久遠が服から取出したのは――



『アイするレイクンへ』



忌々しい…青い封筒。