「何その…邪魔者扱い!!!
会ったばっかりで、帰れって何!!!?」
多分――あたしの見間違い。
ありえない。
久遠が泣きそうな顔をして…
"愛してる、せり"
そう唇を動かしたなんて。
きっとあたしの脳内は薔薇色で、
おかしなおかしな幻想が生まれているんだ。
「……戻る」
突如、そう背を向けて、反対側に歩き出したのは紫堂の当主。
「せりと紫堂玲を連れていけ」
「……勝手にしろ」
「ということだ、せり」
そして久遠は、あたしを乱暴に突き飛ばした。
「やだよ、ねえ…玲くん。まだ居よう?
何だか…帰りたくないよ。
それに…煌もまだ…」
そんなあたしの言葉を遮るように、久遠の声が淡々と響く。
「ヘリには、当主と久涅以外に…何人乗れる?」
ずっと黙っていた久涅が、重い口を開く。
「特別仕様だから…あと1人」
「ひ、1人!!!?」
ありえないよ、だって此処には…。
「煌以外にも、由香ちゃんも小猿くんもクマも居るのに…」
あれ、そう言えば――
由香ちゃんも小猿くんもクマ男も居ない…。
「せり。葉山を連れろ」
「は!!!?」
命令口調で久遠は言う。
「いいな、葉山。
お前は――
紫堂の警護団長なんだ」
強張った顔つきをした桜ちゃんは…こくんと頷いた。
「僕…まだ此処に「紫堂玲」
瑠璃色の瞳が鳶色の瞳に絡みつく。
「忘れ物」
そう久遠が服から取出したのは――
『アイするレイクンへ』
忌々しい…青い封筒。

