シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
「芹霞」


両頬に両手を添えられ…顔を無理矢理玲くんに合わせられた。


真正面、至近距離。


端麗な顔の、ドアップ。


やばいやばい、あたしの鼻。


南無阿弥陀仏…

南無阿弥陀仏…。


「本当?」


「………」


反対の角度に傾けられた麗しいお顔に、思わず見惚れた。


「本当!!?」


強い語気に押されて、あたしは思わず後方に仰け反る。


「は、はいッッ!!」


そう答えると、玲くんは目を伏せ1つ大きな溜息をついた。


そして鳶色の瞳を開くと、あたしに合わせる。


「じゃあ、芹霞の口で言って。復唱して」


「へ?」


「『うんうん』は"やっぱり"適当だった? "やっぱり"その場凌ぎ?」


"やっぱり"をやけに強調させて、玲くんが拗ねる。


心外だ。

ダブルの返事だと受け取ってもらえていないようだ。


「ち、違うよ。あたしもちゃんと考えて…」


そう抗議すれば、


「じゃあ言って。芹霞の口から」


じぃっと玲くんはあたしを見る。


「言え…といわれても、何からどういえばよいのか…」


すると玲くんは溜息をついて、そして微笑んだ。


「じゃあ繰り返してね?」


「うん?」


「"神崎芹霞は、愛の告白をしてきた紫堂玲を避けず、遠ざからず、拒まず、一緒に楽しい時間を過ごします"」


「へ?」


「"へ"じゃないの。繰り返して」


何でしょうか、玲くん…"えげつない"。



「"神崎芹霞は、愛の告白をしてきた紫堂玲を避けず、遠ざからず、拒まず、一緒に楽しい時間を過ごします"」


そう…少しびくびくしながら、鸚鵡返しに…だけどはっきり言うと、玲くんは嬉しそうな笑みをこぼし、続けて言った。


「"神崎芹霞は、紫堂玲のことを【優しい家族】の一員ではなく、自分を愛する1人の男として強く意識し、恋愛対象として真剣に考え、この"お試し"では本当の恋人のように愛し愛されることを誓います"」


「………」


玲くん…恥ずかしくないのかしら。


「……言えないの?」


"えげつない"玲くんが目を細めた。