「緋狭姉に会ったのか!!?
緋狭姉は無事なのか!!!?」
それは――
櫂が屋敷で寝て、魘(うな)されていた時か。
それ以外、櫂が深層に沈み込める場面はなかったはずで。
「ああ、今の処はな」
もしかして緋狭姉…
櫂がこうなることを見越して…
助けようとして、深層に沈んだままだったんじゃねえか?
何だか…そんな気がしたんだ。
「ただ――
"ふさふさ"と"わさわさ"が増えれば…
緋狭さんがどうなるか判らない」
そんなことを櫂が口にして。
「な、何だよ…その…
"ふさふさ"と"わさわさ"だとかは!!?」
そう言えば、緋狭姉もそんなことを言っていた。
「さあ? とりあえず…"無意識"の底辺が人間共通であるのなら、沈めばまた緋狭さんには会える。助けられる。
だが拒まれた」
"今は還るべき時ではない"
「はあああ!!!?」
「ああ、煌。お前にも迷惑かけたな。傷…」
「んなもの放っておけば治るからいいんだけどよ、緋狭姉…」
「大丈夫。こっちの手筈は整っている。久遠はどうだ?」
久遠は相変わらず紅紫色の瞳のまま、櫂に背を向けていて。
「判ったんだろう、緋狭さんを助ける…
"時間を逆転する"方法…」
久遠は答えず…蓮の名前を呼んだ。
「こちらは大丈夫です、久遠様」
何だ、一体何だ!!?
俺の知らない…裏で2人共何をしてたんだ?
「桜」
「はい、こちらも大丈夫です、櫂様」
お前まで、何か知ってるのかよ!!!?
「煌」
櫂が俺を見た。
俺にも説明してくれるのかと、わくわくして見つめたら。
「………。そんな期待に満ちた目をさせて悪いが、お前を理解させる時間がないから説明は省いて、用件だけ言う」
何だよ、それ…。
がくっと俺は項垂れる。
「煌、俺と共に――」
そして櫂は、言ったんだ。
「俺と共に死んで貰う」
――と。