「…僕、言った言葉は取り消さないよ。
だけど、僕と愉しめる?」
拗ねた玲くんも可愛い…
じゃないでしょ、あたし!!!
「前みたいに僕のこと避けない?」
「うんうん」
あたしは何度も強く頷く。
前とは・・・多分桜華で、玲くんを意識して顔を見れなかった時のことを言っているんだろう。
そこまで気にされていたとは驚きだ。
「前みたいに僕を遠ざけない?」
「うんうん」
「前みたいに僕を拒まない?」
「うんうん」
"前みたいに"。
やけに拘る玲くんだ。
それ程ショックだったのか、それ程あたしに信用がないのか。
「僕とのこと、本当に考えてくれる?」
「うんうん」
「僕を異性として意識してくれる?」
「うんうん」
「僕を"彼氏"として扱ってくれる?」
「うんうん」
最早"うんうん"人形と化したあたしに、疑いの鳶色の瞳が向けられる。
「……―――――。
―――…本当?」
訝しげな顔を傾けて、斜め上からあたしの顔を覗き込まれる。
あたしの真意を確かめるかのようなその瞳は、鋭いものではあったけれど…あたしにとってはただの"流し目"で。
それを目の当たりにしてしまったあたしは、反射的に目を逸らして…
「うんうん」
相槌打ちながら、心で念仏を唱える。
はうっ、何で玲くんの色気って、時と場所を問わず発動するんだろう。
ホラーは嫌だ。
ホラーは嫌い。
だから鼻血を出さないようにしないと。

