カラーン。
「小娘。逆の可能性は考えないのか? 玲に選ばれる…もしくは、玲をフる選択肢は?」
すると芹霞が、泣きそうな顔で笑った。
「玲くんが凜ちゃんよりあたしを選ぶって? ありえないね、そんな――夢みたいな話」
どくん。
僕の心は跳ね上がった。
夢みたい…って、
どういう意味?
「あたしは――
最初からフラれるつもりだったし」
俯いた芹霞と、櫂の視線を感じて…
僕の胸が締め付けられる。
苦しい。
心が苦しい。
アリエナイッテナニ?
サイショカラッテナニ?
何処までも僕の愛は分かって貰えていなくて。
何処までも僕の頑張りは空回り過ぎて。
僕だから…なのか。
僕は…何をしてもどうしても、櫂と同じ舞台には立つことは出来ないのか。
"負け戦"
ああ…本当に僕、滑稽だよね…。
だけど――
僕が心に偽って、芹霞をフるということが耐えられない。
だけど…これ以上、櫂を裏切るように…堂々と告白なんて出来ない。
苦しい、苦しい、苦しい。
途端に乱れて痛む僕の心臓。
「玲…心臓に逃げるな」
冷ややかな当主の声。
"逃げる"
的を得ているかも知れない。
僕は唇を噛みしめて、息を整えた。
「玲。言葉にしにくいというのなら、出来るようにさせてやるぞ?」
そして久涅が取出したのは金の万年筆。
「愛の言葉を言えぬ腑抜けな従弟に、贈物だ。
鐘が終わるまでに、"お試し"の結果を親父殿に提示出来なければ…"約束の地(カナン)"は滅ぶぞ?」
どくん。
「卑怯だよ、久涅!!!」
「小娘。お前だって、焦れているだろう? 簡単じゃないか。"お試し"の成果がYESかNOか。2つに1つ。玲の言い方1つで、小娘の返答も変わる」
「変わらないよ、久涅。だって玲くんは凜ちゃんを…」
カラーン。
どくん。
「判るか、玲。今で…11つめの鐘の音。
あと1つだ。
あと1つが鳴り終わる間に、お前が動かねば…」
くるくると回る金の万年筆。
どくん。
櫂…。
櫂…。
僕は――。
僕は!!!!

