そしてふと思う。
あたし…何で玲くんと"お試し"する流れになったんだっけ?
ああ、もう…混乱して記憶も定かじゃないけれど。
だけど――
「判った。…真剣に考えてみる」
そう返事をしなければならない程の、切迫感が玲くんから感じ取れたから。
だけど玲くんの顔は、悲痛に歪んでいた。
「今日が終わる時…
もう一度言うから。
その時まで…結論出さないで?
まだ…決めないで?」
泣き出しそうな顔で微笑まれる。
「だからねえ…。
いつものように…
――笑ってよ…?」
どうしてそんな顔になるの、玲くん。
それならまるで――
拒絶前提の返事をすると、思っているみたいだよ…。
もう、あたしの返事は決まっていると言ってるみたいだよ?
「そんなに、僕を…拒まないでよ」
あたしは今、どんな顔をしているの?
「こんなに早く…言う予定じゃなかったんだ…」
俯いた玲くんから、消え入りそうな声が聞こえた。
「気まずい空気にさせたいわけじゃないのに…。楽しく…いきたかったのに…。どうして僕…」
落ち込んでしまったようだ。
"楽しくいきたかったのに"
「過去形にしないで、玲くん!!! "お出かけ"は始まったばかりなんだから。あたし、玲くんとの"お出かけ"、本当に愉しみにしていたんだから。今だってそう。玲くんが暗くなると、あたしまで気が滅入るじゃない。だから楽しくいこう?」
今日は、玲くんを元気付ける予定なのに、どうしてこんな顔ばかりさせてしまうんだろう。
本当に、自分がほとほと嫌になる。
「一緒に愉しもうよ、玲くん!!!」
玲くんは、あたしの様子を伺っているような…少しいじけたようにも見える弱々しい目だけをこちらに向けた。
それがまるで流し目のような思えて…不覚にも心臓が揺れた。
ああ、馬鹿馬鹿ッッ!!
ときめくな、馬鹿芹霞ッッ!!!
思考と身体がバラバラに行動しているみたいだ。

