シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 


そしてふと思う。

あたし…何で玲くんと"お試し"する流れになったんだっけ?


ああ、もう…混乱して記憶も定かじゃないけれど。


だけど――


「判った。…真剣に考えてみる」


そう返事をしなければならない程の、切迫感が玲くんから感じ取れたから。


だけど玲くんの顔は、悲痛に歪んでいた。


「今日が終わる時…

もう一度言うから。


その時まで…結論出さないで?

まだ…決めないで?」



泣き出しそうな顔で微笑まれる。


「だからねえ…。


いつものように…

――笑ってよ…?」


どうしてそんな顔になるの、玲くん。


それならまるで――

拒絶前提の返事をすると、思っているみたいだよ…。


もう、あたしの返事は決まっていると言ってるみたいだよ?


「そんなに、僕を…拒まないでよ」


あたしは今、どんな顔をしているの?


「こんなに早く…言う予定じゃなかったんだ…」


俯いた玲くんから、消え入りそうな声が聞こえた。


「気まずい空気にさせたいわけじゃないのに…。楽しく…いきたかったのに…。どうして僕…」


落ち込んでしまったようだ。


"楽しくいきたかったのに"


「過去形にしないで、玲くん!!! "お出かけ"は始まったばかりなんだから。あたし、玲くんとの"お出かけ"、本当に愉しみにしていたんだから。今だってそう。玲くんが暗くなると、あたしまで気が滅入るじゃない。だから楽しくいこう?」


今日は、玲くんを元気付ける予定なのに、どうしてこんな顔ばかりさせてしまうんだろう。


本当に、自分がほとほと嫌になる。


「一緒に愉しもうよ、玲くん!!!」


玲くんは、あたしの様子を伺っているような…少しいじけたようにも見える弱々しい目だけをこちらに向けた。


それがまるで流し目のような思えて…不覚にも心臓が揺れた。


ああ、馬鹿馬鹿ッッ!!

ときめくな、馬鹿芹霞ッッ!!!


思考と身体がバラバラに行動しているみたいだ。