「あ…そうそう」
久涅がわざとらしい声を上げて、体を横に向け…桜の近くに赴いた。
「丁度此処に警護団が控えているから、
現次期当主の指揮を高めてやろう。
――警護団長」
桜の体がびくりと揺れる。
「次期当主に、絶対的なる忠誠を誓え」
つまりそれは――
「紫堂玲こそが自分の主だと。
他の誰もに従うことはないと」
櫂ではなく、玲を主人と宣言しろと言っている。
判っていて、久涅は言っている。
櫂が此処で耳を澄ませているということを。
「次期当主を守ることが警護団長の務め。
"死んだ"無様な男ではなく、
横に居る玲こそが主人だ。
だから、簡単だよな?」
桜…。
「誓え、『漆黒の鬼雷』」
桜…。
「僕は、そんな誓いは要らない!!!
桜は…桜だ!!!」
玲がそう助け船を出すけれど…
「警護団長としての当然の意思確認をしているまで。
誓えぬというのならば、
謀反とみなして排斥か、」
そして久涅はくつくつと笑う。
「"永遠なる旅路"に追放になるかもしれないな。
前代の…警護団長のように」
桜が、顔を上げたのが判った。
「ん?」
判っていて、久涅は笑う。
前代の警護団長というのは桜の父親だ。
桜は…櫂が次期当主になった後、父親の役職を引き継いだ。
警護団長は、警護団一の強さを持つ者に与えられる。
つまり桜が引き継いだ時点で、対外的にも…桜が父親よりも強いということを周囲に知らしめさせた。
あいつは家族のことは口にしない。
しかし…強さを信じ続けてきた桜にとって、弱者になった父親という存在は、きっと唾棄すべき者で興味は限りなく0に近かったはずで。
そして弱者というものに対する紫堂の姿勢を考えれば…引退後も安穏とした隠遁生活をしているとは考え難く。
考えられることは――
消されたのか、紫堂に。

