「違うというのなら、
はっきりと宣言して下さい」
玲は引かなかった。
「櫂は自分の子だと。当主の血を引いていると」
玲は…櫂の地盤を固めようとしているのだと判った。
氷皇のビデオでは、久涅のことしか語られていない。
だから…
如何に櫂と久涅が似ていようとも、
親父の…当主の子供ではないと確定的になったわけではねえんだ。
母親は死んでいるから、母親から真偽は問いただせない。
だからせめて父親から――
玲は、はっきりさせて櫂の心を救おうとしている。
玲は信じている。
櫂の二親は、間違いなく…当主と死んだ母親なのだと。
「何故だ?
何故…死んだ"アレ"にそんなことをせねばならぬ?」
…息子という言葉を使わぬ親父。
「お前の言い方ならまるで――
"アレ"が其処で聞いているかのようではないか」
…櫂という名前すら使わぬ親父。
ふるふると…櫂の体が揺れた。
「櫂は…死にました。
当主もご覧になられたはず。
火葬にしたではありませんか」
玲の声は動じることはなく。
逆に責めるように、当主に問い詰める。
「櫂を追い詰めた原因は――
まさか…そんな理由ではないですよね」
櫂が死んだのは親父のせいだと、責め立てる。
「玲…。お前は…次期当主を剥奪されたいのか」
その時、軽快な笑い声が聞こえて。
横から現われたのは――
「久涅…」
櫂が呟いた。
久涅が俺達に背を向けるように立った位置は、丁度当主と玲の姿を掻き消すような位置だった。
風で…久涅の破れた豹柄のコートの布地が、ひらひらと揺れた。
「遊園地で…何をいがみ合っているんですか。
此の地は楽園。笑顔の楽園。
ほらほら、親父殿。
俺が案内して差し上げましょう。
たまには親子で遊園地でも粋でしょう」
久涅は…知っているのだろうか。
自分の出生を。
あの氷皇のビデオが真実であればの話だけれど。

