シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
その時、不意に蘇る。


――僕、紫堂玲は…


「僕を、君の"彼氏"にしてよ?」


――神崎芹霞が好きです。


あれは、何で言われたんだったっけ。



今と同じような、酷く真剣な顔をした玲くんを…

何故あたしは"違う"と思ったんだっけ?

何故あたしは"否定"したんだっけ?



「好きだよ、芹霞…」


玲くんは耳元でそう囁くと、あたしから身体を離した。



「僕を…真剣に考えて欲しい」



そういうと、切なげに笑った。


酷く苦しそうだった。


何とかしてあげたい。


だけどあたしは――

踏み出せない"何か"の制約を感じている。


玲くんは好きだ。

とっても好きだ。


だけど…"何か"に制される。

今までにない奇妙な"ブレーキ"。


ああ…多分それはきっと…

玲くんが紫堂の次期当主になったから、発現したものなんだろう。


そうでなければ、理由が見えない。


王子様の玲くんと庶民のあたし。


仮に本当に付き合ったとしても、先が見える脆い関係となる。


身分が違いすぎる。


それが判らない玲くんじゃないはずなのに。


玲くんには玲くんに相応しいだけの相手がいるはずだ。


あたしは、玲くんと恋を始めてはいけない。


終わりが見える、哀しすぎる恋は嫌なんだ。