玲様が賭けられた、玲様だけの特権の結末。


芹霞さんの心は、櫂様の全てを忘れ玲様に向けられていると…、だから櫂様は暴走したのだと、私は煌から事情を聞いた。


だとしたら。

玲様の求愛に…芹霞さんはどう返答するのか、想像に容易く。


「玲くん…言ってたよね。時間はまだあるから結論は出すなって。"お試し"が終わる0時まで、あと10分あるけれど…もういいよね?」


少し前までは完全なる優位に立っていた櫂様にとって――


今の芹霞さんが玲様との"お試し"の結果を"NO"と返答する可能性は0に近いのなら。

その結果を櫂様が変えるためには、芹霞さん自身の…"忘れた記憶がある"という許容と、"記憶を取り戻したい"という強い思いがなければ駄目で。


「どうして…?」


玲様の声が聞こえた。


「どうして…結論を急ぐの?」


か細く、消え入りそうな声。


「まだ10分あるじゃないか」


多分――


「10分もまだあるじゃないか」


玲様は判っていないんだ。


「君まで…離れていくの?」


芹霞さんの心の動きを。


罪悪感で一杯になっている玲様は、芹霞さんに選ばれるはずはないという固定観念のような先入観が芽生えている。


それ程まで櫂様の影は大きく。



「離れて行きたいのは――

玲くんの方なんでしょう?」


芹霞さんは…悲しみが篭った声を出した。