貪るかのように、玲くんの唇があたしの唇に乱暴に触れる。
シートに押し付けるようにして、苦しげな息を吐きながら。
触れている唇から微かな震えを感じながらも…玲くんの動きは荒く、上唇も下唇も甘噛みされ…そして唇から、ぬるりとした熱い舌が忍び入ってくる。
あたしの歯列をなぞった途端、益々玲くんの息が乱れ、それを聞いたあたしの口からも、まるで呼応するように…溜息のような甘い吐息が漏れてしまった。
すると玲くんの滑らかな舌の動きが性急で深いものとなる。
腔内を繊細で巧みな舌でまさぐられる度、その緩急つけた律動に…あたしの頭の中は白い靄がかかり始める。正常なはずの思考そのものが飛ぶ。
「応え…て…僕、に…」
途切れ途切れの…掠れた声。
言われるがまま、されるがままに…逃げ回っていたあたしの舌は玲くんに導かれる。搦め捕られる。
「ふ……は…ぁ」
絡み合う舌の感触。
大きくなる水音に…更に激しさを増すその音に。
羞恥に身悶えつつも…痺れるような甘い感覚から逃れきれない。
お互いの荒い息遣いに、身体が熱くなってくる。
「…は…ぁ…芹霞…」
あたしは…感じ取っている。
「"僕"を…ね…え、感…じて…?
僕の想い…受け…取って…よ」
繋がった部分から伝わるのは…玲くんの焦りのような苛立ち。
そして…
「好き…だよ、芹霞…」
熱さ。
離された唇から、卑猥な銀の糸が繋がれ…あたしは羞恥に目を瞑ってしまった。
「お願いだから芹霞。
僕を恋愛の対象と考えて…。
僕を意識して?」
頬に両手が添えられ、顔が玲くんの至近距離に固定される。
一直線状に突き刺さってくる、鳶色の瞳。
「僕とのことを…考えて」
命令のように、懇願のように。
その雰囲気が…
あたしの中の何かを刺激した。
誰かを…忘れているような気がして。
流されるなと言われている気がして。
誰に……?

