シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


貪るかのように、玲くんの唇があたしの唇に乱暴に触れる。


シートに押し付けるようにして、苦しげな息を吐きながら。


触れている唇から微かな震えを感じながらも…玲くんの動きは荒く、上唇も下唇も甘噛みされ…そして唇から、ぬるりとした熱い舌が忍び入ってくる。


あたしの歯列をなぞった途端、益々玲くんの息が乱れ、それを聞いたあたしの口からも、まるで呼応するように…溜息のような甘い吐息が漏れてしまった。


すると玲くんの滑らかな舌の動きが性急で深いものとなる。


腔内を繊細で巧みな舌でまさぐられる度、その緩急つけた律動に…あたしの頭の中は白い靄がかかり始める。正常なはずの思考そのものが飛ぶ。


「応え…て…僕、に…」


途切れ途切れの…掠れた声。

言われるがまま、されるがままに…逃げ回っていたあたしの舌は玲くんに導かれる。搦め捕られる。


「ふ……は…ぁ」


絡み合う舌の感触。

大きくなる水音に…更に激しさを増すその音に。


羞恥に身悶えつつも…痺れるような甘い感覚から逃れきれない。

お互いの荒い息遣いに、身体が熱くなってくる。



「…は…ぁ…芹霞…」


あたしは…感じ取っている。


「"僕"を…ね…え、感…じて…?

僕の想い…受け…取って…よ」


繋がった部分から伝わるのは…玲くんの焦りのような苛立ち。


そして…


「好き…だよ、芹霞…」


熱さ。


離された唇から、卑猥な銀の糸が繋がれ…あたしは羞恥に目を瞑ってしまった。



「お願いだから芹霞。

僕を恋愛の対象と考えて…。

僕を意識して?」


頬に両手が添えられ、顔が玲くんの至近距離に固定される。


一直線状に突き刺さってくる、鳶色の瞳。


「僕とのことを…考えて」


命令のように、懇願のように。


その雰囲気が…


あたしの中の何かを刺激した。


誰かを…忘れているような気がして。


流されるなと言われている気がして。



誰に……?