苛立っているのか、傷ついているのか。
優しい玲くんから放たれるのは、明らかに…あたしに対する詰り。
原因が判らないあたしは、ただ狼狽えるばかり。
「……ねえ」
玲くんが言った。
「僕は…君の対象に入れてくれないの?」
「え?」
それは慮外すぎる言葉。
「僕が、君をそういう目で見ていると、
そういう目で僕を見て欲しいのだと…
いつになったら、君は信じてくれるの?」
玲くんは車を停めて、自分のシートベルトを外し…身体ごとあたしに向いた。
「僕とじゃ、嫌?」
強い語気なのに、微かな震えを感じた。
「え?」
あたしは馬鹿みたいに聞き返すことしか出来なくて。
「僕が相手じゃ…夢中になれる恋、出来ない?」
「れ、玲くん? 急に…ど、どうしたの?」
鳶色の瞳が、益々苛立ったように細くなる。
「急……ね。いつもが婉曲過ぎるなら、もっと…はっきり言った方がいいね。
――芹霞。
僕と君との恋愛を真面目に考えて欲しい」
「あ、ああ…あたしと!!!?」
「僕は、君の…本当の恋人になりたい」
冗談…ではなさそうだ。
冗談で、流させてはくれなさそうだ。
あたしは、そこに…演技ではない、真剣さを感じている。
「僕は、君のことを――
"運命"の相手だと思ってる」
"運命"
どきん。
心臓が大きな音をたてた。
「"永遠"の相手だと思ってる」
"永遠"
どきん。
「他の誰でもない。
君が、僕の相手だと思ってる」
玲くんは…自分で言っている意味が、本当に判っているんだろうか。
意味が判らないで、真剣で言っているのではないだろうか。
玲くんの言葉は、素直に心に入らず…その手前側でぐるぐる回っている感じで。
「信じろよ!!!」
玲くんは苛立ったようにハンドルを手で叩いて、そして身体を伸ばしてあたしのシートベルトを外すと、
「玲く…んんんっっ!!?」
唇を押し付けてきたんだ。

