シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 

苛立っているのか、傷ついているのか。


優しい玲くんから放たれるのは、明らかに…あたしに対する詰り。


原因が判らないあたしは、ただ狼狽えるばかり。



「……ねえ」


玲くんが言った。


「僕は…君の対象に入れてくれないの?」


「え?」


それは慮外すぎる言葉。


「僕が、君をそういう目で見ていると、

そういう目で僕を見て欲しいのだと…

いつになったら、君は信じてくれるの?」


玲くんは車を停めて、自分のシートベルトを外し…身体ごとあたしに向いた。


「僕とじゃ、嫌?」


強い語気なのに、微かな震えを感じた。


「え?」


あたしは馬鹿みたいに聞き返すことしか出来なくて。



「僕が相手じゃ…夢中になれる恋、出来ない?」



「れ、玲くん? 急に…ど、どうしたの?」


鳶色の瞳が、益々苛立ったように細くなる。


「急……ね。いつもが婉曲過ぎるなら、もっと…はっきり言った方がいいね。


――芹霞。

僕と君との恋愛を真面目に考えて欲しい」


「あ、ああ…あたしと!!!?」


「僕は、君の…本当の恋人になりたい」


冗談…ではなさそうだ。

冗談で、流させてはくれなさそうだ。


あたしは、そこに…演技ではない、真剣さを感じている。


「僕は、君のことを――

"運命"の相手だと思ってる」


"運命"


どきん。


心臓が大きな音をたてた。



「"永遠"の相手だと思ってる」



"永遠"


どきん。



「他の誰でもない。

君が、僕の相手だと思ってる」



玲くんは…自分で言っている意味が、本当に判っているんだろうか。


意味が判らないで、真剣で言っているのではないだろうか。


玲くんの言葉は、素直に心に入らず…その手前側でぐるぐる回っている感じで。


「信じろよ!!!」


玲くんは苛立ったようにハンドルを手で叩いて、そして身体を伸ばしてあたしのシートベルトを外すと、


「玲く…んんんっっ!!?」



唇を押し付けてきたんだ。