芹霞を激しく抱きしめたい衝動を堪えて、

僕は再度呟いた。



「君が12年間愛し続けてきた紫堂櫂は、死んでいない。


生きて…ちゃんと生きている。



君はもう…

苦しみから逃げる必要はない。



永遠は壊れていない。

失ったものなどない。


思い出せ、愛した男を。

運命の相手を。


君は――…」



戦慄(わなな)く唇。



その先が…出てこない。



拒絶する僕が居て。

泣き叫びたい僕が居て。



だけど――

決めたことだろう?



これは僕しか出来ないこと。



芹霞を解放出来るのは、

魔法をかけた僕だけ。


ワタシタクナイ。



「芹霞、君は…」



セリカヲワタシタクナイ。



駄目だ、堪えろ。

堪えるんだ!!!



僕は芹霞の肩に両手をかけ――



「紫堂櫂と幸せになれ!!!」



芹霞を…櫂の元に押し出した。