「櫂…」
僕は、顔を上げて微笑んだ。
「真実はどうであれ…
お前は失ったモノなど無い」
"失った"
そう思うのは――
芹霞の記憶が無くなったからなんだろう?
「お前はお前だ。
お前の頂には…
真実の王冠(クラウン)が輝いている。
僕のような――
偽りの星冠(ティアラ)ではなく」
「違う!!!
そんなもの、俺は!!!」
「櫂」
僕は、まっすぐに漆黒の瞳を見つめた。
「ごめん。
今…芹霞の魔法を解いて…
お前に返すから…」
苦しい。
僕の心も苦しい。
だけど――!!!
泣きたいのを我慢して、
僕は――
芹霞の腕を引いて引き寄せた。
「え、何…玲くん?」
「ごめんね、僕の自我(エゴ)で…
櫂も芹霞も…傷つけてしまって」
震えたのは…
僕の声か、心か。

