シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



「………。ねえ、芹霞…」


レバーから手が離れたと思ったら、あたしの頬に玲くんの指が触れ、するりと撫でられた。


「……? 危ないよ、玲くん手を放しちゃ…」


憂えた端麗な顔がこちらを向いていた。


鳶色の瞳が、哀しげに揺れ…あたしの心がきゅうと音をたてる。


あたし、玲くんにこんな顔をさせる、"酷い言葉"を吐いてしまったんだろうか。


"今は"彼女"だもんね"


え?

違った?


"お試し"…って、疑似"彼女"だよね?


今もあたし…"彼女"でいいんだよね?


必死に考えていたら、玲くんは静かに口を開いた。


「僕…誰にでもこんなことしてるんじゃないからね? 自分で連れて行って、お店で買い物したのは芹霞が初めてなんだ。そうした"彼女"は、君が初めてなんだよ?」


あたしは"彼女"でいいみたいだったけれど…玲くんの台詞は、凄く意外なものだった。


「玲くんなら、彼女さんに強請(ねだ)られるまま、色々な場所に連れて行ってあげて、好きなもの買って上げているかと思ったよ。勿論センスいい玲くんの好み仕立てでね」


素直にそう言ったら、端麗な顔がますます曇る。


正直、焦る。


あたし、何か口にすればする程…玲くんの機嫌を降下させてないだろうか。


「誕生日だからと強請られて…お店から取り寄せたことはるけれど、実物を自分の目で事前に確かめに行ったことは無いね。後で見せられて、初めてこういうものだったのかって判るくらいで。

ましてや僕の好みで、その場で相手を飾るということはしたことがない。

いつもいつも言われるがまま。

前に言ったかと思うけど、僕は…相手にあまり執着が無くて、淡泊な付き合いだったんだ。だから…長続きしないでふられちゃうんだけどね」


自嘲気な笑い。