シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



玲くんは結構…照れ屋さんだということが今日で判明した。


いつも余裕であたしに鼻血ばかり吹かせているのに、女性を即KOさせる…色気満載の歩く18禁なのに、変な処が子供のように純朴だ。

自覚しているのか無自覚なのか。


天然さん?


…煌の様な、意外性があって面白い。


大体、こんなお子ちゃまのあたしなんかにいちいち照れてたら、本当の恋人が出来たらどうなってしまうんだろう。


どろどろに蕩けきってしまうんだろうか。

こんな王子様を蕩けさせたら、お姫様冥利に尽きるだろう。


運転している玲くんに聞いてみた。


「玲くん…結構甘甘だよね。今までもそんなに照れ屋さんだったの?」


「て、照れ屋さん…!!?」


あたしの言葉があまりに予想外だったらしい。


車体ががくっと揺れた。


大した揺れでもないけれど、それでもさっとあたしのおでこの前に手を出して衝撃を和らげようとしてくれるのは、さすが優しい玲くんだ。


玲くんの顔がほんのり赤く染まっていたけれど、それでも玲くんは運転中だから、意識的にきりりと顔を戻したようだ。


こうした切り替えがすぐ出来るのが、煌と玲くんの違いだよな。


「知らないよ僕は。今まで僕、自分の好みすら言ったことなかったし」


ぼそっと玲くんが言った。


「え? 色々な可愛い女の子に、着せてあげてたのかと思った」


「僕、別に女好きじゃないし、此処まで相手に夢中になったことないよ」


夢中…って、今の話の流れで行けば…あたし?


嫌だな、玲くんお口が上手。


ドキドキが大きくなってきちゃったじゃない。


「――あ、そうか。今は"彼女"だもんね」


その事実に行き当たりドキドキが収まる。


ほっとしたのと同時に、何だか寂しい気もしてくる。


今、"恋人ごっこ"だものね。


疑似恋愛は、本当のドキドキを喚起して…境目が判らなくなってしまう。


恋愛経験がない単純女は、すぐ騙されてしまって…ああ嫌だ。