「そこで玲、新たな問題発生だ」
やけに慎重な声を煌は放つ。
「掛けろだの割れだの…
誰が答え出すよ!!!
玲、お前なら…」
「僕、そんなの計算できるような状況でないこと、判るだろ!!?
久遠は!!?」
頭がいいんだろう、久遠は!!!
「紙読み始めた」
「久遠様は…計算が面倒らしい」
………。
「ボク…数学は昔から赤点組」
「俺、追試組」
「俺か? 最年長の俺がやるのか!!!?」
エンドレスになりそうな喧騒。
僕は久遠に声を上げた。
「久遠!!! 久遠の頭なら、すぐ計算出来るだろ!!!?」
「すぐ出来るなら、お前がやれば?」
かさり。
「久遠ッッッ!!!」
すると舌打ちが聞こえて。
「うるさいな…オレは知らん。そこまで面倒見切れるか」
不機嫌そうな声。
え?
僕が悪いの?
カタカタカタ…。
そんな時だった。
「皆居るの…?
玲くん…居る?」
愛しい愛しい…芹霞の声がしたのは。
「あ、皆居た。
玲くん…此処に居たんだね。
体大丈夫なの?
何処の部屋にも居ないから…あたし凄く心配で…」
僕を…捜してくれたんだろうか。
か細い声に…僕の心が疼いた。
「ごめんね…何も言わないで来ちゃって…。
発作はもう大丈夫だ」
ああ、芹霞に振り向きたい。
だけど顔を向くことすら許されない僕。
カタカタカタ…。
「玲くん…?」
カタカタカタ…。
「何やってるの? ゲーム?」
振り向きたい。
「ごめん、今ちょっと手を離せなくて…」
芹霞を抱きしめたいのに。
ああ、このワンコが居なかったら。
呪わしいこのワンコ!!!
だから僕は…。

