結局、僕の手には何も手に入らない。
僕が切り捨てることで守ろうとしてきたもの――。
芹霞の心は僕から離れようとしてる。
僕の罪を知ってしまった櫂は…僕を許さないだろう。
櫂は僕には戻らない。
邪なる僕の想い。
心は自由だからと…僕の想いを許容し続けてくれた優しい櫂の、これは完全なる裏切り。
公正さを欠き、寝首を掻いた卑怯なことをしたんだ。
判っていた。
判っていたから…知られたくなかった。
ハヤクシラレタカッタ。
バッシテモライタカッタ。
苦しかったから…。
櫂、ごめん。
――玲、何があった…?
今更言い訳はする気はないけれど、
――俺を信じろ!!!
後悔…するわけにもいかないんだ。
――芹霞が好きだよ?
ごめん…。
ただひたすら…、僕は謝る事しか出来ないけれど。
ごめん。
櫂、ごめん。
許されないと判っては居るけれど…
ごめん。
憎悪後、櫂は――
僕の存在を排除した。
それは蔑視の類ではなく…
僕の存在をなかったものにしたんだ。
僕の声は…
もう櫂には届かなくて。
僕の存在は…もう櫂には無くて。
そう、それは――
芹霞の中から消えた櫂の存在の如く。
消された者の悲しみがどれ程強いか、僕はどれだけ赦されない罪を犯したか、思い知った。
僕には謝ることしか、出来なくて。
ごめん。
ごめん…。
謝罪も全て――
僕の声は何1つ…
櫂には届かなかった。

