れ、玲くん…一体、あたしに何をしろと…?
鼻血…。
ねえ、あたしの鼻血煽ってどうするの?
想像してみた。
血塗れの…長いキス…。
赤い赤い…キス。
生々しい…というか、おどろおどろしい。
突如寒気がした。
"何か"を思い出すことを拒絶するような、本能の警告。
何かが泣き叫ぶような…声がして。
だからそれは、あたしは…今まで経験してきた"悍(おぞま)しさ"だと思った。
それがきっと…あたしの悪夢の原因でもあるんだろう。
赤い赤い世界はいらない。
必要ない。
それはただのホラーだ。
そんなのご勘弁。
咄嗟にあたしは――
「グロくならないよう、念仏唱えてがんばります…」
そう言うと、
「それは残念…」
そう苦笑しながら玲くんはドアを閉めた。
その玲くんが、
「ようやく…助手席に座ってくれた…。
だけど、僕とのキスより…"グロい"方にどうして意識が飛ぶのかな…。
第二の難関は"鼻血"と"自覚"か…匙加減が難しいな…。
だけど僕、頑張らなくっちゃ」
そうぶつぶつと呟いていることに、あたしは気づかなかった。

