シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



れ、玲くん…一体、あたしに何をしろと…?


鼻血…。

ねえ、あたしの鼻血煽ってどうするの?



想像してみた。



血塗れの…長いキス…。

赤い赤い…キス。


生々しい…というか、おどろおどろしい。


突如寒気がした。


"何か"を思い出すことを拒絶するような、本能の警告。


何かが泣き叫ぶような…声がして。


だからそれは、あたしは…今まで経験してきた"悍(おぞま)しさ"だと思った。

それがきっと…あたしの悪夢の原因でもあるんだろう。


赤い赤い世界はいらない。


必要ない。


それはただのホラーだ。

そんなのご勘弁。


咄嗟にあたしは――


「グロくならないよう、念仏唱えてがんばります…」


そう言うと、


「それは残念…」


そう苦笑しながら玲くんはドアを閉めた。



その玲くんが、


「ようやく…助手席に座ってくれた…。

だけど、僕とのキスより…"グロい"方にどうして意識が飛ぶのかな…。

第二の難関は"鼻血"と"自覚"か…匙加減が難しいな…。


だけど僕、頑張らなくっちゃ」


そうぶつぶつと呟いていることに、あたしは気づかなかった。