「さあ、どうぞ。僕のお姫様」


にっこり。


そのまま助手席のドアが開かれ、美しく微笑する…若干青色に染まった夢の王子様は、甘さ慣れしていなくて固まり続けるあたしを、とても優雅な振る舞いで助手席に座らせた。


更に身体を伸して、シートベルトまでつけてくれる。


優しい玲くんがあたしを甘やかして、至れり尽せり…してくれることに、今更もじもじしても仕方が無いけれど。


「ふふふ、緊張が解けるおまじない」


ちゅっ。


今度は頬に柔らかい唇があてられた。


かつてない程の"ちゅっ"の連発。


玲くんは玲くんなんだけれど…大根を買いに行ってるあの玲くんとは、別人のような…格好からしてミラクル王子様。


格好が、あたしを戸惑わせるんだろうか。


玲くん…"甘い彼氏"のスイッチが入っちゃってるんだろうか。

いつも激務をこなしているから、甘~い方向に傾いちゃったんだろうか。


こういう時、"彼女"はどうすればいいんだろう。

まさかあたしまで、ちゅっちゅちゅっちゅするわけにもいくまい。


玲くんは、一体あたしに何を期待しているんだろう。


恋愛経験値0のあたしは、想像すら出来ない。



「……ん?」


可愛く小首を傾げられる。


可愛いのに、色気撒き散らすのって反則だと思う。


鼻血…。


噴射寸前で、鼻の奥がむずむずするんだけれど。



「もし鼻血出したら――

止まるまで、長くて甘いキスを続けるよ?」


ドアを閉める時、玲くんがそう言った。


自分の…形いいぷるぷる唇に指をあてて。


「お望みなら、ずっとずっと…僕は構わないよ?」


それはそれは――


「僕が息絶えるまで、キスしていようか」


艶然とお笑いになり…。


更に――


「する?」



目を瞑って、尖らせた唇を突き出した。