「玲くん…」


それでもあたしは呼び続ける。


例え――

玲くんの心があたしになくても。


「好き…」


まだ、あたしは…仮初の彼女だから。


許してください。


切ないね、苦しいね。

この心が…恋、なの?


「玲くん…好きだよ…」


ごめんね、凜ちゃんが好きなのに。

こんなこと言ってごめんね。


こんな時なのに――

言わずにいられなくて、ごめんね。


あたしの涙が、玲くんの涙と混ざり合った。




――…ちゃあああん!!!!



心の何処かで、誰かが泣いている。

胸が締め付けられそうに、切なくて、悲しくて。


誰の心の痛みか判らなくなってくる。

誰が泣いているのか判らなくなっている。


薄れる意識の向こう。


――あははははは。


笑顔で笑い合った幸せな何かを…

見た気がした。


笑いたい。


悲しくなんて…

なりたくないのに。


誰もを悲しませたくないのに。


ねえ…


「ワンコ、紫堂櫂は大丈夫か!!!?」


「櫂様!!? あれは芹霞さ…れ、玲様!!!!?」



私達は――



「旭、それで玲様の治療を!!!!

必ず助けるんだッッッ!!!」



…救われますか?