「玲くん、玲くん…ねえ、聞こえる!!!?」


あたしは慌てて玲くんを抱きとめて、焦った声をかける。


悲鳴のようなか細い息遣い。

その目は焦点があっていない。


それでも虚ろな顔は紫堂櫂に向け続けて。

震える手を紫堂櫂に向けて。


「は…っ…ぐっ…か……ぃ」


紫堂櫂の名を呼んでいた。


「ごめ……ごめ…」


目からはとめどなく涙が溢れて、

その口から出るのは…苦しみの息と謝罪。


謝っている。


玲くんが…

自分を見殺しにした人に謝っている。



それが切なくて。

玲くんの心が痛くて。


あたしは玲くんを胸に掻き入れた。


「玲くん…。芹霞だよ、聞こえる?」


反応がない。



「ごめ…ん…。か…ぃ…」



酷く…妬ける。

心が焦げ付く。



「か…い……」



こんなに呼んでいるのに――

玲くんの心はあたしにはなくて。


「玲くん…」

「か……ぃ…」



だからあたし――

玲くんを振り向かせたくて。



「玲くん…好きだよ…?」


だけど玲くんからの反応は無かった。

ひたすら紫堂櫂の名前だけを呼び続けて、


「か…ぃ……ご…めん…」


泣きながら謝罪をするだけで。



あたしの声は、玲くんの心に届かない。