だけど端麗の顔は、崩れることなく。

見事なまでに感情は表に出ない。


無表情の仮面をつけた玲。


仮面の下の素顔は、どんな表情をしているのだろう。

玲は何を思っているのだろう。


櫂を嫌うなよ?

今まで通りでいてくれよ?


2人の関係に皹が入らないことだけを切に願う。

願うしか俺には出来ねえ。


此処からの距離では、3人の姿がよく見えない。

声だけしか耳に届かない。


櫂…。



「お前は…随分と玲を信頼しているようだが…玲はお前を裏切った」



その言葉に――



「!!!!?」



玲の仮面に皹が入った…


気がした。



「小娘の記憶を消したのは、

――玲だ」


瞬間――。


パリーンと音がして、

今度はシャラシャラと…


玲の顔から――

割れた仮面の欠片が落ちてくる。



零れ落ちてくるのは


――硝子。



脆く壊れやすい…

綺麗な綺麗な硝子の破片。


シャラシャラシャラ…。


それは、玲の心のように繊細な…か細い音をたてて。


まるで涙のような――

いや…これは、涙の雫。


見開かれた目から…

硝子のような涙がぼたぼたと零れ落ちているんだ。


その顔は――


苦痛。

苦悶。

苦渋。


あらゆる苦痛が絡んだ、惨憺な色に覆われていて。



その痛ましさに…

俺は――

思わず息を呑んだ。