「それに…紫茉ちゃんと子供を作るだかっていう条件になって、それが打開策となるというのなら。そこまでに変えたのは、お前や桜が…周涅や雄黄に頑張ってくれたということだろう?」


ふわり。


「お前はその部分を抜かして僕に言ったけれど…判っているから」


玲は微笑んだ。


助けられなかったのに喜んで貰うのは、複雑な気分だけれど。


やっぱり玲は良い奴だなって思ってしまう。

玲を助けてやりたいって思ってしまう。


「勝手に終わらせるなよ。

これからが正念場だろ?」


「ああ、そうか。そうだったね…。どうこれから転じるかは判らないけれど…だけどお前達が居れば…心強いね」


ああもう…。

いつものようにえげつなくいろよ。

芹霞が大好きな優しいお兄様になるなよ。


目の奥が熱くなるじゃないか。


「緋狭さんがそんな状態になっていたのなら、先に背中の具合でも診ておけばよかったな。電子基盤じみた呪詛? なんで電子基盤?

呪詛なら必ず解除方法があるはずだ。時間を逆転させる術、ねえ…」


そして。


パキパキパキ。


玲が片手の指の骨を鳴らして。


「聖だとか言う情報屋を拷問かければ、すぐ情報出て来るかな。いや、出させないと」


えげつなく…

やる気満々だ。


「ん…。今この間に、桜が聖に拷問かけてる…時間はないよなあ。きっと桜だって、久遠を手当てしながら事情説明してるだろうし、お前にでさえ"白皇は死んでも久遠が術を継承しているかも"って思ったことくらい、桜なら気づきそうだし。

ああ、でも。久遠が継承していてもしていなくても。緋狭さんを屋敷に連れたのは正解かもしれない」


玲が目を細めていて。


「レグが残した日記に、ヒントがあるかもしれない」


「あ?」


「久遠が…ラテン語を片っ端から読んでいてくれればいいけれど…」


今度は酷く心配そうに玲は言って、


「久遠は…気が向かないと動かないからなあ…」


大きく溜息をつき、


「僕、ああいう…人使い荒くて、まるで協調性とやる気のない上司や部下、欲しくないや」


ぼそっと言った。