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「"諦めるな"


その言葉を最後に、緋狭姉の言葉は途絶えた。


俺はお前を選ばなかった。

だけどそれは…お前を切り捨てたわけではない」


俺は玲に言った。


「選ばないことにお前を救うチャンスがあると、

その緋狭姉の言葉を信じたんだ」


鳶色の瞳を真っ直ぐに。



「緋狭姉は、お前を見捨てた訳じゃねえ。

朱貴が七瀬と残り、小猿を寄越し…俺達を"約束の地(カナン)"に繋いだのも、意味があると俺は思っている。

朱貴は消える直前、唇を動かしたんだ」


『"約束の地(カナン)"をより望め』


「俺の中で"約束の地(カナン)"は久遠だ。だから久遠が居る場所…屋敷を強く思った。それに…久遠の近くに櫂が居ると思ったから。

また、白皇は死んでても、緋狭姉を助ける白皇の術は久遠が継承しているかも知れねえし。とりあえずまずは屋敷に行けばいいと強く思った。そうした俺の想念が、屋敷という限定された場所に繋いだ理由になるはずだ。

緋狭姉にとっても朱貴にとっても"約束の地(カナン)"はキーポイントらしい。"逆転"だか"破滅"だか…何だかよく判らねえが…日付が変わるその時、何かが起きるのかもな」


――玲を選べば、"約束の地(カナン)"にお前達は行き着かぬだろう、日付が変わる前に。



「全ては…

玲を助ける為の…必然だと、

どうか緋狭姉を恨まねえで欲しいんだ」



その時、鐘の音が9時を告げた。


あと…3時間か。


「日付が変わる…。

ははは。12時の期限をつけられたのは、今度は僕か。

ああ、"お試し"並に…意味がありそうだね」



そう玲は薄く笑って。



「見捨てられたとは思ってないよ。


"諦めるな"。


それが何よりの証拠じゃないか」



ほっとした。


玲は緋狭姉から愛されていると…

伝わっただけでも嬉しいや。