「"彼女"とお似合いですわ、紫堂様」

「そうだといいけど…。僕、芹霞に釣り合えているかな…」


店長さん、見え透いた嘘つかなくてもいいし、玲くん…日本語おかしいし。

不安げな声まで出して、そこまであたしに気を遣わなくてもいいから。


「しかし…紫堂様が社長とお知り合いだとは知りませんでしたわ」


店長がうっとり顔で玲くんに笑った。


「社長…?」


途端…玲くんの笑みが消えていく。


どうしたんだろ。


「ええ、自らデザインしたというそれを持ってここに現われて。ええ、そうです…"アレス=イオア"その人です」


「はあ!!?」


玲くんの素っ頓狂な声が響く。


「こ、これ!!! この手紙の主がくれたものだよね!!? それが社長!!? "アレス=イオア"!!!?」


――あははははは~。


「はい。"アレス=イオア"は謎の人だと言われていますが、店長クラスは知っています。ふふふ、紫堂様は社長のお知り合いだから、いいですよね」


そう言って店長さんは、紙にさらさらと何かを書いた。



『ARES IOA』


それを見た時、玲くんが脱力した。


「凄く…胡散臭いブランドの気がしてきた…」


「ど、どうしたの、玲くん!!?」


玲くんは…翳った顔で笑う。


「あれ…反対から読んでご覧?」


反対……?



『ARES IOA』


右から読んでみた。


『AOI SERA』