久遠の体が、弓なりに仰け反り、
妖麗な顔が苦痛に歪む。
それはまるで映画の一場面のように、
現実味が無い程…美しいもので。
甘美さをも感じさせるもので。
目を奪われた。
そして――
「久遠様!!!?」
久遠は自らの手で背中の剣を引き抜いた。
飛び散る鮮血。
櫂の…あの場面が蘇って。
その赤色が、僕の…僕達の意識を戻した。
久遠が…かなりの怪我を負った事実を認識する。
由香ちゃんの悲鳴。
蓮が倒れた久遠を支えている。
僕は――
乱れるままの心臓を、意思で押さえ込み…
そのまま、回復結界を張る。
僕がそこに入る必要はない。
僕を回復させる時間に、まず久遠を。
久遠の…
久遠の血をまず止めねば!!
「久遠…久遠どうして…!!!?」
由香ちゃんが泣きじゃくる。
「…久遠が死ん「不吉なこと言うな、由香」
それでも発声するのは辛そうで。
どこか…内臓でも損傷したんだろうか。
貫通はしていないから、致死には至らないはずだけれど…これだけ失血していれば、油断できない。
「ごめん、ごめんよ久遠ッッ!!
だけど――…
何で…敵を庇ったんだよッッ!!!」
久遠は、気だるげに言った。
「由香。お前は…機械専門だ。
その手をで染めるな」
そしてその瑠璃の瞳を、
由香ちゃんから――
「……此の地で、悲劇は起させない」
黄色い外套男に…
無表情の仮面男に向けた。
「悲劇を…作るな」
それはまるで言霊のように。

