『ふぅ…・しゅぅ…』
それに時折聞こえるこの音。
まるで喘息のような…。
声帯は…ないのか?
何だ、この男は!!!
人間、だよな!!?
「師匠、クマが…剣を見つけてきたよ!!! 今渡しに行くからね!!!」
「……?」
由香ちゃんの声に、男が体を震わせた気がした。
それはまるで動揺のように。
男からの焦慮感のようなものを感じるのは…気のせいじゃない。
喘鳴のような音が激しくなっているんだ。
何で、突然?
もしかして――
由香ちゃんを恐れてる?
それとも…剣?
由香ちゃんは剣を両手で引き摺るようにしながら、こちらに走ってくる。
彼女は、緊急事態には怪力となるのは過去証明済み。
まず普通の女子高生は、こんな重い剣は両手でも持てないだろう。
『……ぁあぅっ…ぁぁ・・』
間違いない。
仮面は、剣ではなく…由香ちゃんに向けられている。
これは…由香ちゃんに対する怯えだ。
どういうことだ?
男は、最早戦意を失って、ただ固まるのみ。
それは久遠も気づいたようで、訝しげに見つめていたが、やがてはっとしたように瑠璃の瞳が見開かれた。
「紫堂玲、先にせりを探しに行け」
久遠がそう言った。
「こっちが片付いたら、由香とクマとでヘリを探す。お前は…2人を探して守れ」
久遠…?
どうして僕を、突然突き放そうとする?

