きっと久遠であるならば。

彼の意思1つで、芹霞の心を手に入れられるだろう。


それは一度でも、芹霞から恋心を向けられた者の強み。

時は容易く、望んだ過去に戻るだろう。


真実は時間に勝る。


どんなに時間をかけても、僕が欲しい心を、未だに向けられない僕は――

無様にも芹霞に取り縋るしか取る術はなくて。


進むことも戻ることも出来ない…時間の檻に囚われるだけ。


想いなら負けていないのに、

どうして僕は拒まれてしまうのか。


どうして僕は愛されないのか。


どんなに求めても、芹霞は僕から逃れようとする。

それがどんなに僕を苦しめるものか、判ってくれない。


隣に居て欲しい。

僕を愛して欲しい。


今は"お試し"時で、誰よりも僕を意識してくれている時間なのに。

僕には優位な状況のはずなのに。


君が意識しているのは…誰?


僕を見て。

僕の隣に居て。

僕を愛して。


ねえ…

こんなに君が好きなのに、どうして判ってくれないの?

どうして、僕から逃れようとするの?


どうしても、1つの結論に行き着く。


考えたくもなかった最悪の結論は…


僕は真実の愛には敵わない。


幾ら頑張ってみても。

幾ら足掻いてみても。


――紫堂櫂は存在していなかった。

――君が愛したのは紫堂玲だ。


僕は偽りで塗り固められた存在で。


僕はいつまでも脇役。

何処までも主役の引き立て役にしか過ぎないんじゃないかって。


ギャクテンナンテデキヤシナイ。


お姫様は君。

王子様は…誰?


君の運命の相手は…

君が選ぶ相手は…



僕にしてよ!!


そう思ったら、きたんだ。


心臓に…ずきん、と。


拳で、心臓を殴られたような衝撃に、僕の身体が傾いた。


その気の緩みに…芹霞からの手が離れて。

行かないでと僕は芹霞を見つめた。


それでも芹霞の手は差し伸べられなかった。

繋いだ手は解かれた。


落ち着け、僕の心臓。


このままだと、本当に…大きな発作が起きる。


鎮まれ、僕の心臓。