あたしの一番長い幼馴染は煌だ。
厳密に言えばあたしの一番古い幼馴染は、煌ではなく…久遠と言えるのかもしれない。
だけど久遠という存在はあたしにとっては特殊で。
友達や同志として、共に過ごしてきた時間は僅かすぎて…更にはあたしは久遠に恋心を抱いて接していたから、単純な幼馴染としては括(くく)れない。
だとすれば煌が、あたしの古い幼馴染で。
お互いの長所も短所も全て判っている、一番心許せる奴だ。
紫堂櫂は…あたしの過去には一切関知していない。
煌がぺらぺらとあたしのことを喋って、彼とあたしまでもが幼馴染のような錯覚をしているのかとも思ったけれど、何故それが8年間ではなく、12年間になるのかがよく判らなくて。
だから思ってしまった。
紫堂櫂っていうのは、妄想狂(パラノイア)気味なんだろうか。
それとも…彼から肩書きを奪った玲くんを陥れる為の演技なんだろうか。
そう思ったら、異様に警戒心が高まったんだ。
あたしは、玲くんの笑顔を守りたい。
だったら、玲くんに仇なすものの存在を見過ごすことは出来ないと…
玲くんの騎士(ナイト)気分で、あたしは挨拶した。
――よろしくね、紫堂くん。
あたしは今、紫堂櫂という存在を許容した。
玲くんの敵に回れば、あたしが許さない。
例え煌が慕っていた相手でも。
玲くんが紫堂で冷遇されていたことは知っている。
その上、実験台にまでなっていたんだ。
毎日のように心臓発作を起して、
夜、あたしの処で涙を流していた玲くん。
そんな状況を作ったのは――
玲くんから全てを奪った紫堂櫂。
あたしはそんな玲くんをただ見ているだけしか出来なかった。
あの無力感をもう味わいたくない。
もしもこの先、蘇った紫堂櫂が…玲くんの人生を妨害するのなら、あたしは黙っていたくない。
玲くんだけ、そんな不条理なことが起こっていいものか!!
相手は『気高き獅子』。
彼が真実紫堂櫂だというのなら、お馬鹿なあたしなど相手にもならないかもしれないけれど。
それでも、あたしは玲くんを守る。
今、玲くんはようやく微笑みを戻してくれるようになったんだ。
今、玲くんは夢中になれる恋の相手を見つけたんだ。
例え玲くんが永遠を望むのがあたしじゃなくても。
例え玲くんが別の人と結ばれようとも。
あたしは玲くんの笑顔を守りたい。
あたしの中では、紫堂櫂に対する興味よりも、玲くんを守りたいという思いで一杯だったんだ。

