そんなあたしに――
久涅は静かな微笑を浮かべたんだ。
「お前が俺を思って泣いてくれるのなら…ずっとこうしているのも悪くない」
その微笑みは、何だか幸せそうに思えたのは…気のせいか。
その微笑みに…幸せを感じたのは気のせいか。
「何か…ゾンビも蝶も、諦めたのか…数が減ってきたね。今なら…屋敷に戻れそうだ。早く手当…」
「無駄だ」
「え?」
「俺は歓迎されない」
抑揚のない声がして。
「何処に行っても…行くだけ無駄だ」
何でそんな哀しいことを言うんだろう。
どうしてそんな孤独に言うんだろう。
「そんなことないよ!! 皆なら判ってくれるもの!!」
「…必要ない」
「え?」
「もう…疲れた…」
それは久涅から聞いた、初めての弱音。
似つかわしくない程の…言葉。
だから…益々涙が止らなくなってしまって。
久涅が最期を迎えているのではないかと勘違いして、泣きじゃくっていたんだ。
それから、名前を幾度呼んでも返答が無く。
ただ沈黙だけが続いて。
不安で不安で堪らなかった。
そんな時だったんだ。
「芹…霞…」
少し掠れているけれど…
あたしの名を呼ぶ声がしたのは。
それが…
紫堂櫂だったんだ。

