「無事で良かった!!!喋らなくなったから、心配してたんだ…って、ああ、それよりお礼言うのが先だ。
久涅が助けてくれなければ、あたし司狼と旭くんの偽者"人形"に殺されていた。
ありがとう、そしてごめんね、こんな怪我負わせて。背中…痛い?」
俺は…何だ?
「大丈夫だこれくらい。
それより。今更かも知れないが。
俺は…S.S.Aでも言ったはずだ、1人で行動するなと。
何でのこのこ1人で出歩いた、小娘ッッ!!!」
なあ…俺は?
「いや…その囮になろうと…」
「もうその考えはやめろッッ!!!」
俺…
言ったじゃないか。
紫堂櫂だって。
――芹霞ちゃあああん!!!
何で…俺を通り抜ける、芹霞!!!
何で…なかったことにする!!?
俺は振り返り、地面に屈んでいた芹霞の腕を掴んで、強引に引き上げる。
「やだ、何!!? ちょっと離してよ、久涅の偽者!!! あたし、偽者だって判ってるんだから!!! だから消えてッッ!!」
パアアン。
平手打ちを食らう。
くつくつ、くつくつ。
その愉快そうな笑みは…
地面に寝転んで、上半身だけを起している久涅から。
「どうだ、自分を認められない…偽者の気分は?
なあ…? 俺を"模倣"する幻よ」
くつくつ、くつくつ。
「俺は――
久涅を模倣した幻影じゃないッッ!!」
悲鳴のような…鋭い声が出た。
それは心の叫び。
俺は誰の模倣でもなく、
俺は幻ではなく。
俺は今此処に存在している。
「本物だ…」
俺は言った。
声が震えてしまう。
俺が女装してまで、正体を隠そうとした……久涅がいる。
今更どんな言い逃れも出来ない。
だけど…だから何だという?
「随分と…俺の死んだ義弟に似ているなあ?
名前まで…模倣するか、偽者」
もう一度言わせたいのか。
「俺は…本物の…紫堂櫂。
死んでなど…いない」
俺は、ゆっくり…真剣に言ったんだ。
俺の存在意義を賭けた、俺なりの…"言霊"だった。

