これは、ただの視線ではない。

このまま視線を受け続ければ、明らかな弊害が起こる。


それは本能的警告だった。


俺は、意識的に心を閉ざした。


――よいか坊。悪意の精神攻撃を受けた際には、心に防御壁を築いて心を守れ。意思の強さが壁の強度となる。


完全遮断(シャットアウト)。


見せない。

俺の心の内は誰にも。


――だがそれは緊急措置であり、根本的解決ではない。坊の意思が続く間に、元凶を見つけ出して潰せ。



誰だ?

何処からの視線だ?



薄く開かれたドア。



あそこからか!!?


俺は慎重に近付いていき――

そのドアを開けた。



そこで見たのは――



真紅色。

鮮血が飛び散った空間で。



だがその真紅の出処が見当たらなかった。


つまり…誰も居なかったんだ。


それを不可解に思いながらも、

俺に注がれる視線に注意は戻る。


別の場所から、視線を感じたんだ。


俺は視線を追って、早々にその部屋から出た。


何処だ!!?


しかし特定が出来ない。


ぶれる。

視線の場所を、明確に走査出来ない。


視線を追って次々にドアを開けど…そこには同様な真紅色ばかり。


中には人間は居ない。

あるのは、別の場所から向けられる視線だけ。