元より、あたしは鏡の力を制御できない。


どういう理屈で光が出るのかも判らない状態だったのだから、どんなに頑張ってみようとも無理なものは無理。


駄目だ、このままじゃ!!!


「蓮の…この鏡を見てよ!!!

あたし、映っているでしょう!!!?

偽者なら映らないものッッ!!!」


この鏡が真偽を映し出してくれるなら。

真実のあたしが映っているはずで。


あたしの声が届かなくても、

きっと自分達の目で確認したことなら理解してくれる!!!




だけど――



「お姉さん。

語るに落ちたね…?」



鏡にあたしは映っていなかったんだ。



「ええええ!!!?」



居ない。

鏡を覗き込んでいるあたしが居ない。



「間違いないな、お前は…偽者だ」

「ようやく…捕まえられたね、司狼」


時間が…

遅く進んでいるように思えた。


ゆっくりと――


「死ねッッッ!!!」


剣が振られる。


「ばいばい!!!」


双月牙が飛んでくる。


研ぎ澄まされた刃が、大きくなって近づいてくる。


逃れられない。


腰が抜けているあたしは、

動くことが出来ない。


嫌だ。

こんな処で嫌だ!!!


よりによって…

"仲間"にやられるなんて!!!


――とにかく気をつけないと、誰かの記憶に足を掬われることになる。


久遠の声が蘇る。


同士討ちに気をつけろと…

いわれたばかりだったのに!!!



ざしゅっ。



肉が切られる音がして――


視界が真紅色に染まった。



最後に思い浮かんだのは、

泣きじゃくる…


見知らぬ小さな子供だった。