屋敷の周りには火がくべられていた。

篝火(かがりび)という奴だ。


それを横目にして走りながら、あたしは現実を思い出す。


そういえば…生ける屍が復活したんだっけ!!?

あたしのバックには、火気道具なんて入っていない。


黄色い蝶が夜空に舞う。

闇を切り裂く黄色。


走れ、走れ!!!


何処に…?


そんな時、躓(つまず)いて転んでしまった。

やばい!!!


急降下してくる黄色い蝶。


悲鳴は…上げるな!!

皆を巻き込むな!!!


目をぎゅっと瞑り、歯を食いしばる。


その時、何かが走って。


見ると――



「お久しぶり、お姉さん…」


司狼で。


「きゃははははは」


旭くんも居て。



「危ないよ、危ないッたら!!!」


司狼が手にしているのは…

あたしがヘリから落ちた時、玲くんが蝶を薙ぎ払った長剣。


司狼が振り回すその剣は…蝶に対して有効だった。


ああ…。

助かった…。


旭くんが持っているのは…

あれは蓮の双月牙だろう。


司狼が持つ剣同様に、蝶を祓えているということは…

あれも特殊なものなのか。


司狼と旭くんは…

外に出ていたんだ。


みるみるうちに減じられる黄色い蝶。



ほっと息をついていた時、司狼がこちらを振り返り笑った。



「これで――

邪魔者はなくなったね。


これで――

ゆっくり、お姉さんを殺せるね?」