だけど…他は――

調度品以外には何もない。


目を擦って再度覗き込んでも…

目に映るのは真紅色だけ。


あたしは慌てて他の部屋にも赴き、鏡に映してみたけれど…

何処も同じだった。


どういうこと!!!?


鏡の中の世界も、不可思議すぎて、頭が混乱してくる。

どう判断つけて良いのか判らない。


「………?」


その時、何かの気配を感じて。


何気なく…斜め上を見たら・・・




「黄色い蝶!!!?」



1匹だけだけど…

ひらひらと部屋に漂っていたんだ。



あたしは慌てて部屋から出てドアを閉めた。


心臓がどくどくして、喉が渇く。


この屋敷に…黄色い蝶が居るの?

だから皆、犠牲になっちゃったの!!?


何で犠牲者の身体が消えるのか判らない。

だけど…S.S.Aのライブ会場だって、皆消えていたじゃないか。


どうしよう!!!

皆に知らせに…

そう思い、階段に行きかけたあたしは足を止めた。


いつの間にか廊下に――

黄色い蝶が大群で飛んでいたんだ。


あたしは思った。


皆を犠牲にさせたくない。

皆が蝶に…あたしの元に近づけば、蝶が一斉に襲い掛かる。


2階は窓もなく、言わば…袋のねずみ。


対抗できる玲くんが居るとはいえ・・・

玲くんは具合悪いんだ。


玲くんのことだから、発作を起こしても皆を守り続けようとするだろう。

そんな危険なこと、させられないんだ!!!


だったら!!!


あたしは、判るように…廊下の真ん中に薬瓶を置いた。


どうか…誰か気づいてくれますように!!

気づいて、玲くんに薬を届けてくれますように!!!


そしてあたしは…外に飛び出したんだ!!!


出来るだけ・・・

出来るだけ、屋敷から離れよう!!!


あたしが出来るのは、囮になることくらい。


――あたしは、神崎芹霞は!!!


頭に何が浮かんだけれど、

それを打ち消してあたしは走ったんだ。