「居る…わけないか」
赤いドアを開けようと、ドアノブに手をかけようとしたけどやめた。
幾ら久遠の部屋が広いとはいえ、全員を収納できるはずはないし、第一こんな色のドアを開けて入る勇者も居ない気がする。
変に威圧的で、萎縮してしまう類のものだから。
それに久遠の部屋に大移動する理由がない。
更にあたしが無断で入ったのが判られたら、後で何を言われるか判らない。
踵を返し廊下を歩きながら…ふと思う。
今…寝ている司狼を、旭くんが付き添っているんじゃなかったっけ?
何処の部屋かは詳しく聞いていなかったけれど、あたし…全部のドアを開けたよね?
だけど居ない。
司狼も旭くんも、影すら見当たらない。
おかしいよ。
これ絶対おかしいって!!!
あたし達は同じ階の応接間に居て。
そして2階に上がってクマ騒動をしていたといっても…
遅れて玲くんは1階から来たのだし。
何より感知能力優れた玲くんや久遠が、異変に気づかないはずもないし。
それに…凛ちゃんも居ない。
シャワーかなって覗いてみたけれど、
浴室にも彼女は居ない。
キッチンや食堂にも居ない。
皆、皆…忽然と消えてしまった!!!
だけどすぐ考える。
見えていないだけかも知れない。
あたしだって成長するんだ。
そして取り出した蓮の鏡。
適当なドアを開けて、室内を映して見る。
すると――
「!!!!?」
部屋は…真っ赤で。
そう、凄惨な真紅色が飛び散っていたんだ。

