「カメラを通して、東京都"約束の地(カナン)"は繋がっている。そう考えれば…周波数か? より強い周波数を利用した…んだ、きっと」
「じゃあ師匠、カメラを壊せば塔は消えるのかな!!?」
「いや、期待できない。カメラは壊されていると思う」
「がび~ん」
由香ちゃん、古いよそれ。
そんな会話の間にも、あたしは手を解こうと躍起になっていて。
手が汗ばんで滑りやすくなった。
よし、もう少し!!!
そんな時、目の前の玲くんの身体がふらりと傾いたんだ。
手がするりと解けた。
だからあたしはさっと手を引く。
玲くんは慌ててあたしの手を捜しているようだったけれど、あたしは気づかないフリをして、まずは前傾姿勢をとる玲くんの身体を支えた。
玲くんは反対の手を胸にあてている。
何だか…顔色が悪い。
苦しいのかな。
潤んだような鳶色の瞳が切ない光をたたえて、あたしを見てくる。
まるで哀願されているようだ。
「まだ無理は出来ないな。とりあえず椅子に座って話そう。久遠様もどうぞ」
蓮が皆を椅子に進めた。
凜ちゃんはまだ戻らない。
一体何をしているんだろう。
「芹霞、座って…」
苦しそうな息をしながら、ぱんぱんと隣の椅子を叩く玲くん。
心配だし、倒れたら支えてあげる為には隣がいい…そう言い訳しながら座ろうとしたけれど。
「そうだ!!!
あたし玲くんの薬取ってきてたんだ!!!」
そうだよ、何の為に久遠と出かけたのよ!!!
「応接間にバック置いたままだから、取ってくる!!!」
玲くんの役に立てる。
それが嬉しくて、あたしは応接間に向って走った。
この時のあたしは気づかなかったんだ。
それはきっとあたしだけじゃない。
1階で――
異変が起こっているなんて。

