勘違いしてしまいそうで、妙に焦る。


やばい。


あたしは玲くんの恋を応援したいのに!!!


反対の手で、玲くんの手を抓ってみたけど駄目だ。


あたしの精一杯の抵抗も、判ってくれない。


振り解けない。

より一層、手が痛くなるだけ。


不意に鋭い視線を感じた。


詰るような紅紫色の瞳だった。


"ふらふらするな"


また、責められている気がする。


だけど、だけどね。

これは不可抗力だ。


外れないんだよ。


判る?

あたし抵抗しているけど、外れないの!!!


そう目で訴えた時には、久遠はクマの方に視線を戻していた。

大して興味もないらしい。


恋敵である玲くんのこと、どう思ったろう?


凛ちゃんが居るのに、凛ちゃんが居ない間に、あたしと恋人繋ぎするのを…どう感じただろう。


玲くんはあっちもこっちもっていう人じゃないはずなのに。


1階で何が起きてたの?

ショックなことでもあったの?


ねえ…まさかあたし、

"保険"をかけられているの?


悪い方にばかり考えてしまい、心がどんよりだ。


相変わらず手を繋いだまま、何事も無かったかのような平然とした玲くんの声が聞こえる。


「久涅は何でメモリを三沢さんに渡したんだろう。三沢さんが本物だと判ってた上で、僕達にこれが渡ると判った上での行動なんだろうか」


「そういえば。あの久涅っていうの…今思えば、何だか慌てたような感じだったな。身体がふらふらとして息が乱れていたような。

ああ、そうだ。記者会見っていうのは、なんだったんだ?」


イケクマが久遠に聞いた。

代わりに答えたのは蓮で。


「記者会見というものはなされていない。7時に開催すると、中継でも宣言していたのに」

「ほう? 東京ではあんなに騒いでいたのに。7時には何か起きたのか?」


「黒い塔が出現した」


「三沢さん、多分…報道陣は利用され、ありったけを集められたんだよ。そして出てきたのがあの塔。此処にはテレビ局がないけれど…代わりに」


「中継用のカメラは多くあった。確かに、変貌した報道陣連中は居ても、テレビカメラはなかった。

ということは、沢山のテレビカメラの…電波か何かが、塔の発現を誘引したのか」


久遠が気だるげに言った。